スペルトジャパン(Spelt Japan)

スペルトって何?
小麦栽培の歴史と種類




What's spelt?(スペルトとは)


古代エジプト人の麦の収穫現在、小麦は世界の中で最も多く栽培されている穀物です。人類の食糧として、小麦栽培がいつ頃からどのように始まったのか、その正確な時期と内容は不明です。一説によると、今から2万年前にエジプトで野生の麦が利用され、1万8千年から1万6千年前にかけて次第にそれがアフリカ大陸からユーラシア大陸の方へと移動して行ったようです。古代オリエントでは、約1万2千年前に野生の麦が利用されていたことがうかがえます。チグリス・ユーフラテス川流域の麦が食糧として利用され、メソポタミア文明の繁栄を支えたとされています。遺跡の発掘調査により製粉の道具である臼や、収穫に使った鎌が出土し、麦が食糧として利用されていたことが判りました。有史以前の多くの遺跡から、小麦の穂や粒が発見されていることから、小麦は人類最初の作物であることはほぼ間違いのないことのようです。
サドルカーンで粉を挽く女人類が最初に栽培していた小麦は、植物学の分類では一粒小麦の「アインコーンEinkorn」と思われます(下の分類表を参照)。1万〜8500年前の先土器新石器時代には、野生の麦と栽培した麦の両方を混ぜ、小麦も大麦も区別せずに食べていたようです。最初は、麦に豆や雑穀が混ざったものを石と石の間にはさんで製粉し、水で練って焼いて食べていたと思われます。
紀元前6500年頃になると「土器」を使うようになり、粗挽きした麦を「おかゆ」にして食べるようになりました。「おかゆ」には小麦よりも大麦が適していたため、古代エジプトの古王国、中王国時代には主食は大麦でした。西アジアから中国に先に伝えられたのは当時の主食であった「大麦」であり、「大麦」と「小麦」との区別は穂の大きさではなく、中国では主なものを「大」、従のものを「小」としたために名付けられたといわれています。
エジプト王の副葬品に、『サドルカーンで粉を挽く女』と呼ばれる有名な石像があります。「サドルカーン」とは粉挽き専用の道具で、「サドル」とは1メートルほどの平らな石の皿、「カーン」とは棒状の石臼のことです。「サドル」の上に小麦の粒をのせ、「カーン」を両手で押さえながら体重をかけて前後させ、少量ずつすりつぶして製粉していました。製粉した小麦粉に水を加え、こね続けると弾力と粘りのある固まりとなり、これを焼くと軟らかくておいしい食べ物ができました。ところが、大麦の場合は同じよう調理しても硬いものにしかならず、主食が大麦から小麦へと転換するきっかけとなりました。
古代エジプトで始まった「パンづくり」の話は、あまりにも有名です。ある時、こね終えた生地をつくって放っておいたところ、この生地は大きく膨らみ表面には泡が出ていました。面白半分に焼いてみたら、大変香ばしく軟らかくておいしい「パン」ができたという話です。これこそが、現在の私たちが食べている「発酵パン」の始まりで、生地が大きく膨らんだのは天然の酵母菌による働きだったのですが、当時の人たちは神に感謝してパンを「神からの贈り物」と崇めました。この出来事からパンが急速に広まり、「大麦」から「小麦」への主食の転換は決定的なものとなりました。
古代のエジプト人は豊穣の女神としてアイシスを、後世のギリシア人はデメターを、ローマ人はセレスを農業や穀物の女神として礼拝し、小麦からできたパンを神からの贈り物として崇拝しました。スペルト小麦は旧約聖書における記述(出エジプト記、エゼキエル)や、古代ローマ時代のポンペイの遺跡から発掘された一般家庭の家計簿の中に「スペルト小麦16アス(貨幣単位)」との記述があり、古代からパンの原料として使用されていたことをうかがい知る事ができます。
日本への小麦の到来は、中国から朝鮮半島を経由して伝わり、弥生式文化の中末期には小麦や大麦が栽培されていました。当時、小麦のことを、末牟岐(まむぎ)または古牟岐(こむぎ)と称していたようです。小麦の大生産地であるアメリカ大陸へは16世紀に、オーストラリア大陸へは18世紀にヨーロッパからの移民がその種子を持ち込み栽培が始まりました。


■小麦の種類(植物学的分類)
分 類
染色体
学   名
英 名
日本名
主な用途
1粒系
14
Triticum monococcum L.
Einkorn
一粒小麦
飼 料
2粒系
28
Triticum dicoccum Schubel
Triticum durum Desf.
Triticum turgidum L.
 
Triticum percicum Vav
(Triticum carthlicum Nev.)
Triticum polonicum L.
Emmer
Durum
Poulard(米)
Rivet(英)
Percian
 
Polish
エンマー小麦
デュラム小麦
イギリス小麦
 
ペルシャ小麦
 
ボーランド小麦
飼 料
パスタ
菓 子
 
菓 子
焼 物
焼 物
普通系
(3粒以上)
42
Triticum spelta L.
Triticum aestivum L.
(Triticum vulgare Host.)
Triticum compactum Host.
  
Triticum sphaerococcum Perc
Spelt
Common
  
Club
  
Shot
スペルト小麦
普通小麦
(パン小麦)
クラブ小麦
(密穂小麦)
印度矮性小麦
パン、麺、焼物
パン,麺
 
菓 子
 
焼 物



植物学的な小麦の分類では、小穂に稔実する粒が1粒、2粒、3粒以上できるものと3つに分けています。これらの染色体数はそれぞれ、1粒系は14(=7×2)、2粒系は28(=7×4)、普通系(3粒以上)は42(=7×6)と違います。スペルト小麦の学名はTriticum spelta L..で、植物学上の分類では普通系(3粒以上)に属しています


■各種の古代小麦
各種の古代小麦
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